2006年10月04日

厚生年金、元は取れるか?

本とは離れますが、「給付と負担のバランス」が出たところで
「厚生年金、払った分は受給時にもらえるのか?」を考えてみたいと思います。

厚生労働省は、すべての世代について、支払った保険料の2.1倍(2005年生まれ)以上の給付が受けられると試算しています。

(2003.8.28 第24回社会保障審議会年金部会資料)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/08/txt/s0828-3.txt
民間の資料
http://www.jri.co.jp/press/2003/1120.pdf のp6


この試算については、さまざまな批判があります。

■高山憲之のHP(一橋大学教授)
http://www.ier.hit-u.ac.jp/~takayama/pdf/interviews/datafocus/diamond0311.pdf
では、
1.保険料は本人負担分のみ考慮、事業者負担を除外
2.国庫負担割合を現行の3分の1ではなく、2分の1で試算
3.保険料や給付を時価に換算する際の割増率・割引率を賃金上昇率(年率2%)と仮定している。従来、それらは運用利回り(年率3.25%)に等しいとしていた。

という問題を指摘しています。
上記1〜3を考慮すると、2005年生まれの負担と給付の割合は

1 事業主負担を考慮  …2.1/2=1.05倍
2 国庫負担割合を変える…1.05倍→0.95倍
3 割引率を運用利回りとする …0.95倍→0.6倍

同様に計算すると、1960年以降に生まれた人は、保険料納付分が返ってこないことになります。

意識していませんが、
従業員を一人雇うと、動くお金は(報酬月額だけ考え賞与額を除外した場合)

・報酬月額× 保険料率/2  …保険料(労働者本人負担)
・報酬月額×(1- 保険料率/2)…手取り賃金(労働者本人)

・報酬月額× 保険料率/2 …保険料(事業主負担)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 計   報酬月額×(1+ 保険料率/2)

ということですね。

厚生労働省試算には、他にも、将来の出生率を楽観的数値にしているという指摘があります。


■さて、もう1冊おもしろいと思った本があります。

こちらでは、「厚生年金は払った分以上かえる。高利回り」という立場をとっており、
理由は
・事業主負担を除外(本人負担を基準に計算している)
・国民年金の第3種被保険者(≒専業主婦)への給付も考慮
とのことです。

■たとえば顧客に助言するとき、
a.「損だから払うな」
b.「厚生年金は払った分以上かえる。必ず入っておきなさい」
どちらに立つべきなのでしょうか。

高山さんの説を見るまでは断然 b.でしたが、
よくわからなくなってきました。

・マクロなお金の流れとして返ってきているか?

・個々人にとってのベストな選択は?
とは、別の問題。とは考えているのですが…
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2006年10月02日

『図解 年金のしくみ』−テ−マ3 公的年金制度のあゆみ(1985〜)

第1章 年金制度のあらまし
 テ−マ3 公的年金制度のあゆみ−安定した老後所得の確保に向けて

最近もそうですが…

(9/27)年金返上者の表彰を検討・厚労省
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060927AT3S0101Y27092006.html

(9/29)確定拠出年金2兆5000億円超す、導入から丸5年
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt68/20060928AS2C2802P28092006.html

(10/1)年金保険料徴収、民間が低コストで達成
http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt68/index20060930AS3S3000Y30092006.html

下のように並べてみると、ひとつの方向に進んでいるように見えて、
その時々で結構ぶれがある(?いろんなことを思いついている)ものです。

※「注」は私の補足
1.国が運営する公的年金

公的年金制度…すべての国民に老後生活の経済的基盤を終身にわたり確実に、社会全体として保障することを目的として国が運営する制度。

・20歳〜60歳未満の全国民…国民年金(基礎年金)
・70歳未満の被用者…上記+厚生年金保険(民間会社員)・共済年金(公務員等)

  1973年改正:世代間扶養システムとしての公的年金制度確立
  その後の改正:4回(1985,1989,1994,2000)

2.基礎年金が導入された1985年の改正

 昭和50年代〜 分立した制度間の不合理な格差・女性の年金保障の不安定性・高齢化による将来の財政不安などが指摘

→10年に及ぶ改革論議を経て、
  1985 公的年金制度の再編成と公平化・安定化を図る改正 →1986.4〜実施
   :日本の年金制度全般にわたる抜本的な改正

  ・1階部分の一元化(=基礎年金)
    国民年金、厚生年金、共済年金の加入者がいずれも基礎年金受給(5万円/月)
     (注:これにより厚生年金の第4種被保険者を廃止(一部の人は継続))

     それぞれの制度の定額部分は基礎年金に吸収、財政も一元化

    →報酬比例部分(2階部分)が厚生年金、共済年金から支給
     共済年金の年金額の計算式を厚生年金と同じ方式に→給付面での各制度間の公平化

  ・会社員等の配偶者に固有の年金(第3号被保険者)→女性の年金権の確立

  ・給付水準の適正化、負担増の緩和を図る

  他、1人1年金の原則による併給調整、障害年金の改正 など

3.支給開始年齢65歳への引き上げ

1989改正 厚生年金の65歳支給開始を含む改正案、大きな議論を呼ぶ

→年金額改定
・保険料率引き上げ(国民年金、厚生年金)
・完全物価スライド制導入
・20歳以上の学生の国民年金強制加入
・国民年金基金の創設
・年金支払回数の改定

 他、在職老齢年金の改正 など

1994改正
・特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢が段階的に65歳に引き上げ
 (65歳〜 報酬比例相当の部分年金)


・財政再計算(5年に1度)時に見直す給付額の基準:諸控除前賃金の伸び→手取り賃金の伸び

・厚生年金の保険料率が段階的に引き上げ
 1995.4〜 ボーナスからも報酬額の1%(労使折半)徴収
  (注:総報酬制は2000年改正)

・在職老齢年金の改正
・雇用保険との併給の調整(失業等給付・高年齢雇用継続給付)
・育児休業中の本人分の厚生年金保険料免除

 他、年金額の改定、遺族・障害年金の改正 など

4.さらに見直された「負担」と「給付」

■2000年改正

94年改正時点の予測を上回る少子・高齢化の進展や長引く経済の低迷など、公的年金を取り巻く社会・経済環境を踏まえて、将来にわたり公的年金制度の安定化を図るべく、負担と給付の見直し

負担のあり方:3原則

1.年金受給者の増加等に対応し、今後とも保険料(率)の段階的な引き上げを図る(ただし保険料(率)の引き上げ計画については厳しい経済状況等に配慮することとする)

2.将来世代の負担を過重としないよう、年金受給世代と現役世代が歩み寄り、将来の厚生年金保険料を年収の2割程度(労使折半)にとどめる、

3.世代間・世代内の負担の公平性を確保

給付のあり方:2原則

1.給付総額の伸びを調整
(その際、現在および将来の年金受給者の年金額は現在の年金額を下回らない、物価上昇に見合って年金額を引き上げる、急激な変化を避け将来に向かって緩やかに制度改正を進めていく)

2.自助努力を支援する私的年金制度の充実を図る



・保険料の引き上げ計画を凍結

・給付抑制策として、
 ・厚生年金の報酬比例部分の給付水準を5%削減
 ・報酬比例部分の支給開始年齢を段階的に65歳へ引き上げ
 ・65歳以降の年金は原則として物価スライドのみで改定(賃金スライドをしない)
 ・65-69最にも在職老齢年金制度を導入
などを含む制度改正が、順次施行

しかし、2000年の改正時点の予測をさらに上回って少子・高齢化が進んだため、2004年の改正ではさらなる負担と給付の見直しが行われる予定(←注:2004年発行のため)。
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2006年09月30日

『図解 年金のしくみ』−テ−マ2. 年金制度発足から戦後までの歩み

第1章 年金制度のあらまし
 テ−マ2 年金制度発足から戦後までの歩み−軍人恩給からスタ−ト

公的年金制度の沿革(この「テ−マ2」に、ほぼ同じ図が掲載されています)
http://www.mhlw.go.jp/topics/2006/bukyoku/nenkin/05.html

おおざっぱに
a.1973年改正までの制度構築・充実期間
b. aとcにはさまれた無風?期間
c.1985年から現在に至る「負担と給付の見直し」期間
にわかれるようですね。

※「注」は私の補足
1.軍人恩給から始まった日本の年金制度 …恩賞。社会全体の老後所得保障ではない
  1875 海軍  1876 陸軍  1884 文官 →1923 恩給法で統一
  1905〜 共済組合制度(官業製鉄所、鉄道・専売・印刷・通信などの現業官庁)

2.昭和になって民間の労働者にも広がる

  戦前日本:「家族による高齢者扶養が当然」→公的年金は公務員のみ

 …1940 船員保険制度(戦時下の海上運送のための船員確保が目的)
   総合的→1985 船員減少→財政危機→厚生年金保険に吸収

  1942 労働者年金保険制度(工場・鉱山 10人以上 男子)
   老齢・障害・死亡・脱退を対象 →失業保険を除く保障制度が整う
  1944 厚生年金保険法(5人以上 事務職員・女子も)
   被保険者期間≧20年→55歳から支給(坑内員は ≧15年→50歳〜)
    cf.当時の平均寿命<50歳→老後所得の保障を果たしたとはいえない

  企業年金:1905〜 鐘紡  /財閥系など一部のみ

3.戦後の混乱期の厚生年金  ←ここです!

■終戦直後〜1949年 激しいインフレ←積立金目減り、厚生年金は実質的価値を失う
  労使とも年金保険料の負担増に耐える体力なし→年金制度の存続が危ぶまれる
   ↓
 ・1947 業務上障害について労働者災害補償保険制度が創設されたことにともない、厚生年金から労災部分を分離
 ・1948 老齢年金(当時はまだ受給者なし)の年額を低水準に凍結、これに見合って保険料を大幅に引き下げる(非常措置)

■厚生年金の給付水準低い→独自に共済組合設立
    1954 私立学校教職員組合  1959 農林漁業団体
    他、中小企業も
 →「厚生年金は崩壊の危機」

4.公務員の公的年金制度の沿革

 ・国家公務員共済組合として統合  
   1948 恩給法の適用のない職員 → 1959 恩給制度の適用される官吏も

 ・地方公務員
   市町村教職員組合(1955)等 → 1962 地方公務員共済組合に統合

 ・1956 3公社(国鉄・専売・電電:恩給法と国家公務員共済組合法の準用)に、
      公共企業等職員等共済組合法を適用

5.今日の公的年金制度に向けて
  1954 新厚生年金保険法

 1.報酬比例のみ→定額部分と組み合わせ(←所得再分配機能)
 2.加給年金(配偶者・18歳未満の子)
 3.支給開始年齢を60歳に(男子のみ)

6.国民皆年金となった公的年金

  S30年代〜 医療での国民皆保険が進む→国民皆年金の要請が強くなった

 ・1959〜 国民年金法→福祉年金(=保険料負担なし)開始
  1961〜 国民年金(=保険料負担)開始
   →国民皆年金

 ・1961〜 通算年金制度
   職業が変わって別の年金制度に移っても、各制度の加入期間を通算して
   一定期間以上の場合、それぞれの制度から加入期間に応じて年金が支給

7.改善された給付水準

  1965 給付水準の大幅引き上げ(1万円年金:月額)
      他、在職老齢年金制度の新設
        障害・遺族年金の最低保障の導入

  1969 2万円年金

  1973 「福祉元年」年金額の大幅引き上げ→国際的に見劣りしない水準
  ・厚生年金の標準的な給付水準…現役男子会社員の平均税込月収の60%程度と決める
    →標準的な年金額は52,000円/月!
  ・国民年金…標準的な老齢年金額が夫婦あわせて5万円/月→厚生年金との均衡を図る
  ・物価スライド制の導入:全国消費者物価指数が変動時(>5%)に改定
   (注:・平成元(1989)年〜 完全自動物価スライド制
      ・賃金スライドも1973年(裁定時+5年おき(財政再計算時))
        →2000年〜裁定時のみ)

8.給付と負担のアンバランス

  1973年改正→給付が大幅改善、世代間の扶養システムの色彩を鮮明に
  しかし負担の引き上げは先送り 給付と負担のバランス崩れる

  その後の改正:4回(1985,1989,1994,2000)

  制度の改革が進むにつれ、年金の果たす役割が拡大
  一方で、財政の逼迫、世代間・世代内の不公平、女性の年金等の問題点も
posted by 若葉 at 08:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『図解 年金のしくみ』要約−目次

本試験に関係あるのはテーマ2・3です。なので、ここからはじめます。
(次は未定)

DCプランナー・年金アドバイザーなどに役立ちそうですね。
(年金の資格はいろいろあって、よくわからないのですが)
第1章 年金制度のあらまし
 テ−マ1 年金制度の概要と問題点−揺れ動く年金制度
 テ−マ2 年金制度発足から戦後までの歩み−軍人恩給からスタ−ト
 テ−マ3 公的年金制度のあゆみ−安定した老後所得の確保に向けて
 テ−マ4 企業年金制度のあゆみ−退職金制度が年金化
 テ−マ5 老後の備えは自助努力で
 コラム1 標準報酬月額
第2章 年金制度のしくみ
 テ−マ6 年金数理・財政のしくみ(その1)−掛金はどのように算出されるか
 テ−マ7 年金数理・財政のしくみ(その2)−年金財政の検証方法
 テ−マ8 年金制度全体のしくみ−あなたの年金は何階建て?
 テ−マ9 国民年金のしくみ−全国民共通の公的年金
 テ−マ10 厚生年金保険のしくみ−民間会社員が加入する公的年金
 テ−マ11 共済年金のしくみ−公務員等が加入する公的年金
 テ−マ12 厚生年金基金のしくみ−公的な顔をあわせ持つ企業年金
 テ−マ13 適格退職年金のしくみ−税制上「適格な」企業年金
 テ−マ14 確定拠出年金のしくみ−給付額は運用成績次第
 テ−マ15 確定給付企業年金のしくみ−規約型と基金型
 テ−マ16 退職金制度のしくみ−退職一時金から企業年金へ
 テ−マ17 財形年金のしくみ−最も身近な個人年金制度
 テ−マ18 個人年金のしくみ−自助努力による任意の年金
 テ−マ19 年金税制のしくみ−さまざまな段階で登場する税金
 テ−マ20 欧米の年金制度−進む自助努力型制度への転換
 コラム2 海外勤務と年金
第3章 年金運用のしくみ
 テ−マ21 年金運用の概要−本格的な機関投資家として期待される年金資金
 テ−マ22 年金運用の具体的プロセス−運用基本方針の策定から運用成果の評価まで
 テ−マ23 厚生年金・国民年金の運用−年金積立金の自主運用
 テ−マ24 厚生年金基金の運用−運用基本方針にもとづいた主体的な運用へ
 テ−マ25 適格退職年金の運用−急速な運用規制緩和と残された課題
 テ−マ26 運用機関の特徴−運用機関にはどのようなものがあるか
 テ−マ27 運用機関の年金資産受託競争−年金積立金運用のビッグバン
 テ−マ28 米国の年金運用−年金基金は運用のプロ
 コラム3 運用のリスクとリタ−ン
第4章 年金制度の改革
 テ−マ29 公的年金の負担と給付の見直し−2004年の改正案
 テ−マ30 賃金と公的年金の調整−在職老齢年金の改正
 テ−マ31 厳しさを増す企業年金財政−積立不足が企業経営の重荷に
 テ−マ32 退職給付会計の導入−統一的な基準で情報開示
 テ−マ33 企業年金の通算制度−転職者に不利とならない企業年金の確立に向けて
 テ−マ34 年金基金関係者の受託者責任−基金の破綻を契機に高まる認識
 テ−マ35 強化が望まれる企業年金の受給権保護策−基金の解散が促す改革の動き
 テ−マ36 欧米の企業年金の受給権保護策−失敗から学んだ教訓
 コラム4 カフェテリアプラン
第5章 年金制度の課題と将来像
 テ−マ37 公的年金の将来像−負担と給付の見直し
 テ−マ38 公的年金の今後の課題−2004年改正案が残した論点と課題
 テ−マ39 受託者責任の定着に向けて−「プロの時代」に不可欠な認識
 テ−マ40 年金基金によるコーポレート・ガバナンス−資産運用効率化の一手段
 コラム5 法律問題としての「受給権保護」
posted by 若葉 at 08:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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