2008年09月15日

野川先生の講義


わかりやすい労働契約法

わかりやすい労働契約法

野川 忍

2007/12 商事法務 ISBN-13: 978-4785714970



本筋を掘り下げてかみくだいた、わかりやすい講義でした。

聴衆とのキャッチボールが上手で、ほとんど緊張を感じませんでした(←失礼か?!)

野川先生 および 主催者の方に、御礼申し上げます。
ありがとうございました。
また聴いてみたい授業です。


■本の内容+そこから考えたこと を、こちらにまとめてみました。

→「労働契約法」カテゴリ
http://trying.seesaa.net/category/4679677-1.html



↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 08:15| Comment(0) | TrackBack(1) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月21日

労働契約法:「合意」をめぐる冒険(3)−労働契約の内容の変更

「合意」シリーズは、この回で一段落し、次から第2の宿題=「定義の違い」に移る予定です。(ここまで一気にきたので、たぶんインターバルをはさむでしょう)


■8条−「できる」の読み方

6条 労働契約は、合意により成立する。
8条 合意により、労働契約の内容である労働条件を変更できる。

…Q:「する」と「できる」の違いは?(2008.2.18エントリ



通達(H20.1.23基発0123004)による答えは、こうです。

第3 労働契約の成立及び変更(法第2章関係)
3 労働契約の内容の変更(法第8条関係)

(1)趣旨=「合意の原則」の確認
(2)内容
ア 法第8条は、「労働者及び使用者」が「合意」するという要件を満たした場合に、「労働契約の内容である労働条件」が「変更」されるという法的効果が生じることを規定したものであること。

これだと、「する」と「できる」の違いは、はっきりわかりません。

が、下記と同様に考えるとすれば、「合意しなかった場合の取扱いは、規定からは明らかでない(=グレーゾーン)」ことになります。

第5 期間の定めのある労働契約(法第4章関係)
2 契約期間中の解雇(法第17条第1項関係)
(1)趣旨
有期契約労働者の実態をみると、契約期間中の雇用保障を期待している者が多くみられるところである。この契約期間中の雇用保障に関しては、民法第628条において、「当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない理由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる」ことが規定されているが、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合の取扱いについては、同条の規定からは明らかでない。
このため、法第17条第1項において、「やむを得ない事由があるとき」に該当しない場合は解雇することができないことを明らかにしたものであること。

とすると、文理解釈上「『できる』という表現によって、裏命題である9条に例外を入れる余地ができた」ということが可能ですね。

できれば、あいまいさの少ない書き方をしてほしいが…
問題があるのでしょうか(たとえば国会・審議会等での合意が得にくいとか)

あるいは、最初から「9条・10条とあわせて読む」ことを前提に、こういう書き方になったのかな?


■「9条(原則+例外の存在)−10条」という構成(=就業規則による変更が例外であることの明記)

h18.12.27 労働政策審議会答申 にはなく、h19.1.25 労働契約法案要綱 に初めて出てきたようです。

審議が進むにつれ、より慎重な書き方になったということですね。


■10条 −今回ちょっと「要注意」と思ったのが、第3-4(3)ケ です。
「就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分」について、就業規則による変更が可能な場合と不可能な場合があるということですね。


第3−4 就業規則の変更による労働契約の内容の変更(法第9条・第10条関係)

(1)趣旨
ア …この労働契約の内容である労働条件の変更については、法第8条の「合意の原則」によることが契約の一般原則であるが、我が国においては、就業規則によって労働条件を統一的に設定し、労働条件の変更も就業規則の変更によることが広く行われており、その際、就業規則の変更により自由に労働条件を変更することができるとの使用者の誤解や、就業規則の変更による労働条件の変更に関する個別労働関係紛争もみられるところである。
このため、

法第9条において、
 法第8条の「合意の原則」を就業規則の変更による労働条件の変更の場面に当てはめ、使用者は就業規則の変更によって一方的に労働契約の内容である労働条件を労働者の不利益に変更することはできないことを確認的に規定した上で、
[法第9条ただし書は、法第10条の場合は、法第9条本文に規定する原則の例外であることを規定 :第3-4(2)ア]

法第10条において、
就業規則の変更によって労働契約の内容である労働条件が変更後の就業規則に定めるところによるものとされる場合[=周知+合理性:第3-4(3)ア]
を明らかにしたものであること。


第3-4(3)法第10条の内容

ア 法第10条は、「就業規則の変更」という方法によって「労働条件を変更する場合」において、使用者が「変更後の就業規則を労働者に周知させ」たこと及び「就業規則の変更」が「合理的なものである」という要件を満たした場合に、労働契約の変更についての「合意の原則」の例外として、「労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによる」という法的効果が生じることを規定したものであること。

ク 法10条ただし書の「就業規則の変更によっては変更されない労働条件」として合意していた部分については、同条ただし書により、法第12条に該当する場合(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合)を除き、その合意が優先するものであること。

ケ なお、法第7条ただし書の「就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分」については、

将来的な労働条件について 
(1)就業規則の変更により変更することを許容するもの 
(2)就業規則の変更ではなく個別の合意により変更することとするもの 

のいずれもがあり得るものであり、

(1)の場合には法第10条本文が適用され、[=就業規則で上書き]
(2)の場合には同条ただし書が適用される[=個別合意が優先]

ものであること。



↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 20:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月20日

労働契約法:「合意」をめぐる冒険(2)−労働契約の成立(就業規則と労働契約の内容)

前回までを総論(全般的な考え方)として、各論に移ります。

■労働契約の内容−法第7条

ちょっとびっくりしたのですが、

通達によれば、「6条 vs 7条」は、「原則 vs 例外」ではないそうです。


第3-2(2) 労働契約の成立(法第6条・第7条関係)−法第7条

イ(ア)…これは、労働契約の成立についての合意はあるものの、労働条件は詳細に定めていない場合であっても、就業規則で定める労働条件によって労働契約の内容を補充することにより、労働契約の内容を確定するものであること。

 (キ)法第7条は、就業規則により労働契約の内容を補充することを規定したものであることから、同条本文の規定による法的効果が生じるのは、労働契約において詳細に定められていない部分についてであり、「就業規則の内容と異なる労働条件」を合意していた部分については、同条ただし書により、法第12条に該当する場合(合意の内容が就業規則で定める基準に達しない場合)を除き、その合意が優先するものであること。


(ポカーン…)

7条は、6条の空白を埋めているだけだと。

8条vs(9条vs10条) のように、先行する条文を否定するわけではないと。

だから、9条のように「例外」があることを明示していないということでしょうか。


大山鳴動してネズミ一匹というか、狐につままれた感じですが…

あと、「就業規則(=一方的に決めたもの)が、なぜ契約になるか」については、9条・10条と同様、諸説あるわけですが…(要件となる「合理性」は、「成立」と「変更」で必ずしも同じではないらしい →余裕あれば取り上げられるか?)

2008.2.16エントリで"to be continued"としたところの答えは、公式にはこのようなものとなります。


労働契約の「成立」と「内容確定」を切り離している点については、
2008.3.18エントリ
「成立要件としての合意」vs「解釈対象としての合意」として説明したとおりですね。
(→野田進「労働契約における『合意』」p19-20(『講座21世紀における労働法』2000) より)


p.s じゃあ労働契約・就業規則のどちらもないエリアはどうなるんだと。その問題が(立法上の)宿題かな(一部は法・労働協約で上書きされるとして)


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 09:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月19日

労働契約法:「合意」をめぐる冒険−横ずれ断層 1-5

■法6条の背景(と私が思ったもの)…その2

野田論文の隣に、次の記述を発見しました(「犬も歩けば」的な …拾いもの でしょうか) 

水町勇一郎「労働契約の成立過程と法」『講座21世紀における労働法』2000 より
(p51)

労働契約の成立過程をめぐる法的問題:
 |
 +1.契約の性質決定 …当事者意思の確定
 |
 +2.具体的問題の解決 …規範的解決の要素を含んだ問題


1.でのポイント:

(1)労働契約等は諾成契約=意思表示の合致で成立

 →当事者意思の確定(=a,bの探求) が最も重要
   a.両当事者の真の意思
   b.どの時点で 意思表示の合致=合意 が成立したのか

(2) (1)当事者意思の確定の探求 は、表面的な意思(契約書の文言等)に依拠するのではなく、
客観的な状況を踏まえることが重要。

契約の性質決定を当事者に委ねてしまうと、当事者が簡単に強行法規を潜脱できる(例えば労働者保護法規の適用を免れるため当事者が労働契約ではないと言い張ることができる)ようになるため、契約の性質決定は第三者(最終的には裁判所)によって客観的事情を踏まえつつ行われなければならない。


「当事者意思の確定 は、表面(契約書の文言等)のみに依拠しないこと」は、野川 忍『わかりやすい労働契約法』 でも言及していましたね。
 →2008.02.10エントリ


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 07:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月18日

労働契約法:「合意」をめぐる冒険−横ずれ断層 1-4

野田論文については、断片的に引用する前に、
全体を要約すべきかな、という気がしてきました。

宿題が …一問去ってまた一問(いや、去ってないか(^^;

そうした中で、あえて、法6条の背景であろう!と私が考えた箇所を2つあげておきます。

2008.2.28エントリの疑問U-1 

Q:「労働しますよ」「賃金払いますよ」さえ合意すれば、労働条件の詳細について合意しなくても、労働契約は成立するの?
A: Yes!(H20.1.23基発0123004 第3-2(1)イ(オ))
Q2:なんて大雑把な… そんなんで問題ないの?!

については、ここで一定の答えが得られたようです。

「成立要件としての合意」が法6条、「解釈対象としての合意」が法7条に対応しそうですね。

野田進「労働契約における『合意』」p19-20(『講座21世紀における労働法』2000) より

(p25-26)

労働契約における合意は、新しい雇用動向や労基法改正の動きのもとで、それ自体が自己完結的に規範的な意味を持つよう再構成することが要請される。そのためには、いかなる分析視角のもとにどのような理論形成をなすべきか。

1.合意の2つの機能

…第1に、労働契約が成立するためには、一定の事項について労働者と使用者の意思が合致していなければならず、その意味での合意は労働契約の成立要件として位置づけられる。

第2に、労働契約の締結の際には、労務を提供するためにさしあたり必要な事項、すなわち雇用の基本条件、種々の労働条件、労務の遂行の仕方、企業や仕事の特性に応じた留意事項なども決めている。これらの合意はすべて明示されているわけではなく、黙示または包括的な合意であることもあるから、その内容は解釈を通じて明らかにされることになる。

こうして、第1の合意を「成立要件としての合意」、第2の合意を「解釈対象としての合意」と呼ぶことができよう。

前者は、労働契約の成立において必要な合意であるから、その段階での意思の合致があれば足りる。これにたいして、後者は、契約締結時には一部のみ成立し契約の長期的な継続の中で少しずつ完成されれば足り、また少なからず変更が予定されているものである。


2.合意の複合的構造 →図2-1

…「成立要件としての合意」は基本事項についての合意で足りるが、「解釈対象としての合意」の構造は当事者を拘束する権利義務を決定する合意であり、その内容は複合的である。
労働契約の締結の際には、労働条件等について基本的または概括的な合意しかなさないで、より具体的な事項は、その後の契約履行の過程における契約の展開の中で、新たに付け加えられ詳細化されるのが一般である。…したがって、労働契約の締結時に概括的な合意がなされたからといって、労働者はその事項のすべてに同意したと解することはできない。また、労働契約の締結時に明確な合意がないときにも、その後の一定の事実の累積により合意が形成されることもありうる。

 要するに、労働契約における解釈対象としての合意は、主として契約締結時になされる基本的・概括的な部分(基本的合意)と、その後の展開でアポステリオリ[事後的]に追加される具体的にして詳細な部分(追加的合意)から構成される重層的な構造をもつ。…解釈対象としての合意はかかる複合的構造として理解することが重要なのである。


(p36-37)
[3 労働契約の解釈と合意]

[合意はいつ成立したのか? という意思解釈の基準においても]重視すべきなのは、合意の複合的構造である。…労働契約における合意の多くは、労働契約締結時の基本的合意だけでは完結しておらず、その後に追加される細目についての合意の累積により完成される。したがって、わが国の労働契約の解釈においては契約締結時における当事者双方の意思が重視されるとともに、それに加えて、契約締結時に各事項についてなされた、一方当事者の申込みと他方の明示または黙示の承諾により追加された合意の状況が、十分に評価され斟酌される必要がある。



↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 08:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月17日

労働契約法:「合意」をめぐる冒険−横ずれ断層 1-3

前回の連載?中には、気づいていなかったことがあります。

社労士試験で

法令>労働協約>就業規則>労働契約

という優先順位を学ぶように、

労働法において、労働契約=個別合意の順位は最下位(「埋め草」的な位置づけ)となっていました。


ひらたくいえば

労働者は絵を描くのが下手である

なにはともあれ、まずキャンバスを成立させる。
そこに保護者が強行的・直律的効力で、ちゃんとした絵をデフォルトで描いてあげよう!

というのが、労働法の発想といえそうです。

このへんに対応した(と思える)記述があるので、拾ってみましょう。

野田進「労働契約における『合意』」p19-20(『講座21世紀における労働法』2000) より

20世紀における労働法の発展は、労働契約における個別合意の支配を制限・排除することに特徴づけられる。労働法は、労働者の利益擁護の役割をになうがゆえに、個別合意を疑うことから出発した。その結果、労働契約は契約外の種々の諸制度、すなわち強行法としての労働法規、労働協約、就業規則などの制度の支配下におかれる。労働契約の内容を決定するのはこれらの制度の作り出す身分(statut)であり、当事者の合意によることは例外的となる。…労働契約は「衰退」し、「契約から身分へ」の動きが要請されたのである。 …b

しかし、世紀の終盤に至り、発達したテクノロジーのもとで「個別債権化」する雇用と、「自立した」労働者像を前提に労働契約を考えるとき、…そうした規制を受け入れ、了解して労働契約を締結したのもまた、当事者の合意にほかならない。その意味では、労働契約とは、法律や労働協約に対して階層的に従属しているのではなく、…個別合意の主体的優位を語ることが、かえって個別合意と集団的諸制度の連携を可能にし、「意思または合意という人間の自由にもとづく価値」を最大限に可能にするのである。労働契約は復権し、再び「身分から契約へ」の動きが語られることになる。 …a


■いままで、労働契約法について
・原則:合意
・例外:就業規則は合意なしで契約になる場合がある
と把握し、この「例外」があるところが議論の焦点であると考えてきました。

ところが問題は、さらに複雑なようです。

「合意が原則です」の 合意 って何?

を、まだ把握していないことに気づきました。


合意 をクローズアップすることが、労働者の不利になる場合があるらしい。

過去には、労働契約(=個別合意)を就業規則より優先し、就業規則の基準を引き下げる労働契約が黙示に成立していた、とする裁判例があり、
就業規則の労働契約に対する強行的直律的効力(労基法93条[今回移りましたね])を看過した誤ったものとしかいいようがない」と菅野先生が怒っておられます(菅野『労働法』第7版補正2版 p101)。

労働契約法で、12条・13条によって優先順位が定められているのは、こうした裁判例に対応するためかな(今までは漠然と「あ、ひっこしてる」と考えていたのですが)。

「労働契約をなるべくさっさと成立させたい」は、直律的効力による上書を前提とした、労働者保護の装置ではないか、とここで思いました。


■保護と合意の重視を両方ともあわせもつところに、労働契約法の特徴があるのかもしれません。

とすると、「合意」について、根本的に知る必要がありますね。

すなわち、民法を知ることが必要なようです。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 07:27| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月16日

労働契約法:「合意」をめぐる冒険−横ずれ断層 1-2

積極的用法と消極的用法の両方を含むのが、6条です。
細かく分析してみましょう。


(労働契約の成立)第六条

a.労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

b.労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。


光の当て方によって、見え方が違ってきますね。

a.労働契約は、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

b.労働契約は「使用されて労働+賃金支払」によって成立する。

(記号は、前回の「積極/消極」に対応)


通達は、次のように言及しています。

第3-2(1)

ア 趣旨
当事者の合意により契約が成立することは、契約の一般原則である労働契約についても当てはまるものであって、法第6条は、この労働契約の成立についての基本原則である「合意の原則」を確認したものであること。 …a

イ 内容
(ア)
法第6条は、
労働契約の成立は労働者及び使用者の合意によることを規定する …a
とともに、
「労働者が使用者に使用されて労働」すること及び「使用者がこれに対して賃金を支払う」ことが合意の要素であることを規定したもの …b
であること。

「趣旨」(≒総論)にはa.のみかかれていますが、「内容」(≒各論)によると a.とb. の両方が存在する …と、この通達は考えているようです。

つまり、通達はこの6条を
・合意原則の確認規定
のみならず、
・「労働契約の定義[=成立要件]規定」
ともみなしていると考えられます。

「合意原則の確認規定」のほうは、「合意がなければ成立しない」と範囲を限定する性質のものでしょう。

では、「労働契約の成立要件規定」 はどうでしょうか。

第3-2(1)イ 内容
(オ)法第6条の労働契約の成立の要件としては、労働条件を詳細に定めていなかった場合であっても、労働契約そのものは成立し得るものであること。

2008.2.28エントリのU-1で言及したところです。
「労働契約の成立する場合」を、なるべく広くとらえようとする傾向がうかがえます。

つまり、

合意原則の確認規定 と 労働契約の成立要件規定

は、真逆のベクトルをもつように思われます。

合意原則の確認規定 は、総則部分の繰り返し(=民法由来)ですが、
労働契約の成立要件規定 は、ここで初めて登場=労働法固有の発想 のように見えます。

とすると

民法と労働法という正反対のベクトルが、「合意」という言葉を共有することによって、ひとつの文に重層的に存在している(=横ずれ断層の路頭)のが、法6条

といえないでしょうか。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 06:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月15日

労働契約法:「合意」をめぐる冒険−横ずれ断層 1-1

前回の連載(?)で疑問として残ったのは「労働契約の成立・変更における原則と例外」=合意原則とその例外 でした。
そこで、「合意」をキーワードとして、通達(H20.1.23基発0123004)を分析してみようと思います。

エントリ1回分に相当する内容を、3回にわけて掲載する予定です。

今回の目的は、法そのものへの直接の意見は暫くおき、通達に寄り添って
「上記通達が、労働契約法をどのように解釈しているか? その背景は?」をさぐる(その出発点となる)ことです。
力不足かつ自己流と思いますので、率直なご指摘をお待ちします。


■まず、「合意」をキーワード考え、通達内の用例を検索してみました。

(元来が単なる印象である/多義的or判断不可のパターンもある/軸がまだ暫定的 …といった限界はご了承ください。)

↓結果

(1)第1 法制定の趣旨等/第2 総則(法第1章関係)
(2)第3 労働契約の成立及び変更(法第2章関係)−総論・労働契約の成立(法第6条・第7条)
(3)第3 労働契約の成立及び変更(法第2章関係)−労働契約の内容の変更(法第8条・第9条・第10条)
(4)第3 労働契約の成立及び変更(法第2章関係)−就業規則違反時(法第12条)・法・労働協約と就業規則の関係(法第13条)
  第5 期間の定めのある労働契約(法第17条関係)


※ 「第4 労働契約の継続及び終了(法第3章関係)」には用例なし

ちなみに、使用頻度は
「合意」:47箇所
「原則」:42箇所
「合意の原則」:12箇所
「合意のみで成立[変更]」:3箇所


表の段階で、すでに自己流の分類をかけておりますが…
とりあえず、まずご一読ください。


私なりには、

a 合意しなければ〜できない・合意によって〜する
b 合意[さえ]すれば〜できる・合意しているので〜できる 等

この2パターンに分かれるのでは?

という印象を持ちました。


あえていえば、 a…「印籠・積極活用系」・b…「脱力系」 でしょうか。
(カスタマイズ志向(とことんすりあわせる) vs デフォルト値志向(埋め草的) といえるかも。)

本エントリでは、以後、便宜上、
a 積極的用法
b 消極的用法
とよぶことにします。


「合意」の用法に2パターンがある…として:
この第一印象は、何を意味するのか。 →次回へ!


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 21:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月28日

労働契約法:エピローグ2−おわりのはじまり?!

h20.3.1より施行されます。

労働契約法について:厚生労働省
 a.労働契約法について(h19.12.5発基1205001)、b.労働契約法の施行について(h20.1.23基発0123004)、c.リーフレット「労働契約法のポイント」 等


c.リーフレット「労働契約法のポイント」について:


●T.あれ?

◇T-1 「濫用と認められる懲戒は無効」(15条… p6)

条文に準拠していない(14条と混同?)。

原則と例外が逆転している。
解雇と同様、
「客観的に合理的+社会通念上相当と認められない懲戒は濫用として無効」のはず。



●U.これは、すっきりしないな…

◇U-1 「労働しますよ」「賃金払いますよ」さえ合意すれば、労働条件の詳細について合意しなくても、労働契約が成立するように読める。(6条 …p3)

 通達b(h20.1.23基発0123004)にも、そのような記述があります。

とすると、「合意の線で進めたが、詳細についての合意がないので、契約は成立していない」というパウエル氏(プロ野球)の言葉は、労働契約については適用されないことになります。
そうなの?


◇U-2 労働契約を結ぶ場合(7条 …p5の図)

原則=合意 例外=就業規則 のはずだが…

並列されており、むしろ「原則=就業規則 例外=合意」と読まれかねない。

どちらが原則[例外]か、わかるように記載するのが適切では。

同じく「原則vs例外」の高年齢者雇用確保措置については、次のように
「原則>例外」の順に掲載されている。(冒頭p4のフローチャート)
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/kourei2/dl/leaflet2.pdf


◇U-3 労働契約を変える場合(9条 …p5の図)=U-2に同じ


◇U-4 有期労働契約を結ぶ場合(17条1項 …p6)

民法628条との違いが明確ではない。(労働契約法で新たに設けた意義 が、この記述からは読み取りにくい)


通達b(h20.1.23基発0123004)に、
6条・8条に関する疑問(2008.2.16エントリおよび2008.2.18エントリ)に対応する記述があります。
年アド2級が終わったら、とりあげてみたいと思います。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 06:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月20日

エピローグ−民主党案との対応

まだ説明していない条文がありますが、
労働基準法からの引越メンバー等(11条,12条,13条,19条)・他の法律との整合(18条)ですので、本稿のような概説なら省略しても支障はないでしょう。

[追記 2008.2.27]
支障おおあり。

年アド2級が終わったら、もろもろの定義(他の労働法令との差)について、1エントリを立てようと思います。


■民主党案と労働契約法の比較 →こんなかんじ

ネタ元:政府案との対応:民主党HP
  法案:衆議院HP


黄色が、現在の法に対応する項目。
=白いところは、現在の法でカバーされていません。

見解の一致を見なかったため、条文に載らなかったが、現存する判例法理・論点をすべて法に規定すると、これだけあるということです(判例の定着度・幅は、論点により異なる)。


使「こんなに細かく決められてたまるか!」
労「就業規則で思いのまま? 許すか!」

公も加わって侃侃諤諤→結果として、最大公約数の小さな一角だけが残った…という経緯については、2008.1.27エントリ「つわものどもが夢の跡」で既に述べたとおりです。(→図


今後の改正により、水面下の論点が条文に盛り込まれることは、十分に考えられるでしょう。


■民主党案の特徴 …実践労務 2007.10.24 を参考

◇既存の判例法理をほとんど盛り込む
・就業規則との関係、募集・採用、採用内定、試用期間、労働契約の内容、労働契約の変更等、勤務地の変更、出向及び転籍、労働者の損害賠償責任、懲戒、労働契約の終了、期間の定めのある労働契約等

◇労働契約の内容の基準を定める…現行にない制限もある
・試用期間の上限3ヶ月・解雇予告日数(在職3年超60日)など

◇労使紛争の解決ルール…
・第三者活用(労働契約の変更を裁判所に請求する権利を使用者に認める制度など)
・広域転勤、出向、転籍など人事異動について労働者との協議・同意を要する

◇正・非正規雇用者の均等待遇(≠均衡対偶)を義務づけ


    *    *


15回にわたる労働契約法特集、いかがでしたでか。

個人的には「就業規則を労働者と使用者との共同決定する枠組みの導入」を勧める論について「へえ〜。そういわれればそうだな」と思いました。
(…そうすると「労使委員会」が絡んできて、ややこしくなるのかな? ううむ…といった疑問もありますが)

「運用の自己責任」が叫ばれて「金融商品取引法」が制定されたように、
労働の世界においても、集団的・取締的な規定から
個人の契約をベースとした世界へ動いていきそうな気配です。

労働村の外の人にとっては「秘伝」「奥義」であった判例法理を
ペラ1枚にまとめた(→多くの人が読めるようになった)ところに、労働契約法の意義があるのかもしれません。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 02:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月19日

労働契約の内容の変更−例外(就業規則)(2)

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

[前回(2009.2.17)までのあらすじ] →就業規則の変更等に関する判例・裁判例:厚生労働省

Q1:就業規則の変更で労働条件を変更…同意しない労働者にも適用される場合とは?

A1.秋北バス事件(最大判s43.12.25)ほか:合理的→同意しないことを理由に拒否は許されない
 +大曲市農協事件(最3判63.2.16):重要な労働条件(賃金・退職金など)は高度の必要性に基づいた合理性要


[本日のテーマ]Q2:「合理性」判断の具体的根拠は?

2つの判例をおさえましょう。


1●.第四銀行事件(最2判h9.2.28)

・就業規則の変更の合理性の有無は、具体的には、

a.労働者が被る不利益の程度、

  vs

b 1.使用者側の変更の必要性の内容・程度、
 2.変更後の就業規則の内容自体の相当性、
 3.代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、
 4.労働組合等との交渉の経緯、
 5.他の労働組合又は他の従業員の対応、
 6.同種事項に関する我が国社会における一般的状況


を総合考慮して判断すべき。

・「合理性あり」の根拠のひとつに、多数組合(9割組織)との合意(労働協約)を締結して行ったことをあげる


…「比較衡量」(天秤にかける)です。


この「合理性判断7要素」が、ほぼそのまま労働契約法の「合理性4要素」となっています。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、
変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、

就業規則の変更が、

労働者の受ける不利益の程度、 ←a,b3

労働条件の変更の必要性、    ←b1
変更後の就業規則の内容の相当性、 ←b2,b6
労働組合等との交渉の状況     ←b4,b5,b6

その他の就業規則の変更に係る事情 ←b3,b5,b6+「等」[若葉]

に照らして合理的なものであるときは、

労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。(後略)

(対応(「その他」以外)は、岩出誠(ロア・ユナイテッド法律事務所)を参考)


2●みちのく銀行事件(最1判h12.9.7)

・特定の少数者(この判例では55歳以上)のみ著しい不利益→不利益変更の合理性否定

・多数組合の同意だけではたりず、同意確保のプロセスを含めて立証要


■実務上
・「労働者の受ける不利益の程度」「労働条件の変更の必要性」などは相対的で抽象的
・周知や交渉はかなりクリアにチェックできる

→就業規則の変更による労働条件の変更が反対する労働者をも拘束するか否かは、一部の労働者の極端な不利益を回避しつつ、使用者が職場全体の合意を得るべくどれだけ努力したかによることになるだろう。


■10条:その他留意点

・10条の要件を満たさない不利益変更は効力なし→ex.さかのぼって就業規則改定時点からの未払い賃金支給(不利益変更が賃下げの場合)

・但書:個別の労働契約で合意した部分には、就業規則による労働条件変更は及ばない


■就業規則による労働条件の不利益変更に関する考え方が複雑な道筋をたどる最大の理由は、そもそも就業規則が使用者の一方的な作成・変更によって法令上の効力を持つこと。
ドイツ:日本の就業規則に相当する内容は、その事業所における労働者の代表機関である事業所委員会と使用者との共同決定

→日本も近い将来、同じような仕組みを導入することが、この問題を根本的に解決する王道ではないか。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 00:25| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月18日

労働契約の内容の変更−例外(就業規則)(1)

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

(労働契約の内容の変更)
第八条[合意原則] 労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。

(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条  使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。

第十条 使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。


9条と10条は、条文の表題が2つの条文にかかっている特別な構造(6条&7条 と同様)
=2つの条文は一括して理解すべき


■Q:8条と9条(・10条)の関係は?−本文より

労働契約の内容が合意によらねば変更できないという8条の原則は、その変更が就業規則による場合でも
原則としては、同じなのだ、という確認をしているのが9条

∴合意によらず就業規則の変更によって労働契約内容としての労働条件が変更されることを認める10条は、非常に厳格な要件のもとに解釈されなければならない。

つまり、就業規則の変更により労働条件を変更して、それが合意をしない労働者をも拘束するということはないというのが原則

これは、これまでの職場の実務における「常識」とは必ずしも一致しない原則
 その意味では、9条は大きな意義がある。


■Q:8条と9条の関係は?(2)

8条 合意→変更できる

↑↓?

9条 合意なしに就業規則で労働条件の変更はできない(原則:9条)…次条を除く
 |
 +−例外(10条)


8条は、6条よりもゆるい書き方をしています。


(労働契約の成立)
第六条  労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

(労働契約の内容の変更)
第八条  労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。


すなわち


6条 労働契約は、合意により成立する。
8条 合意により、労働契約の内容である労働条件を変更できる。



Q2(未解決)

「する」と「できる」の違いは、どういう意味を持つのか?

=下記2つの意味は、同じなのか?

a.第八条  労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
b.合意によらずして労働条件が変更された場合、それは労働契約ではない。


6条は「合意によらず成立したものは労働契約ではない」(対偶)と言い換え可です。

8条も「b=労働契約は、合意によらずして変更できない」といえるのか?


…それに答えたのが9条、ということになります。
すなわち「例外あり」を明示した答えとなっています。

同じように「原則−例外」という組み合わせながら、「6条−7条」と異なる書き方となっているのは、なぜかな?


※法の読み方として、上記(文字通り)が適切かどうか?

指定された以外の方法を禁止する場合でも「〜できる」と書くのが法文の書き方として通常、であれば、上記の説明は根底から覆ることになります。

…というわけで、ぐるぐるループ中。

通常の読み方として「〜できる」がどのような限定なのか? がわかれば… ご教示いただけるとありがたいです。


■「労働契約の内容としての労働条件」と関係を明示しています。(いま気づいたのですが、これは7条も同じですね)


■「合意」が明示のみか、黙示も含むか? については、見解が分かれています。重要な論点となりそうです。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 06:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月17日

労働契約の成立−例外(就業規則)(2)

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

合意原則→合意していないルールは当事者を拘束しない
  but
 職場の秩序が保てない

…Q:どうする?


■秋北バス事件 最大判s43.12.25 →就業規則の変更等に関する判例・裁判例

cf.(
最高裁の判例検索システム、「秋北バス」ヒットなし…なぜ?)

1 就業規則の法的性質
 就業規則は、合理的な労働条件を定めているかぎり、法的規範性が認められる。
(「経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則による」という事実たる慣習が成立しているとして)

2 就業規則変更の効力(→9条・10条(後述))
 新たな就業規則の作成又は変更によって労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないが、その就業規則が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない

○事実たる慣習 →民法92条(cf.慣習法(Wikipedia)
強行規定に反しないような慣習が契約当事者の間に確立して、それが反復して行われ、双方に「そうしなければならないものなのだ」という認識(=規範意識)が確立している場合には、契約内容を補充する役割を果たす。

民法第92条(任意規定と異なる慣習)
法令中の公の秩序に関しない規定と異なる慣習がある場合において、法律行為の当事者がその慣習による意思を有しているものと認められるときは、その慣習に従う。

あれま。これも民法かい。


■「就業規則の法的性質」に関する判例(その後)

・電電公社帯広局事件(最1判s61.3.13)…就業規則の存在・内容を知っているかor個別的に同意を与えたかを問わず適用
・日立製作所武蔵工場事件(最1判h3.11.28)…就業規則の内容が合理的→労働契約の内容

・フジ興産事件(最2判h15.10.10)…就業規則が法的規範性を持つには、周知手続要


■その後の判例では、焦点が「合理性の判断基準」に移っていく
→こちらについては、9条・10条で詳説


■疑問(著者私見)

○合理性と周知を条件に就業規則の規定を労働契約の内容にする立場に、直ちに賛成はできない
理由:
1.最高裁の統一見解が明らかでない
 ・大法廷の「事実たる慣習」の考え方に対するその後の最高裁の対応がはっきりしない ・上記3判決(電電帯広、日立武蔵、フジ興産)は業務命令と懲戒のみ。配転・出向などの人事異動、賃金や労働時間などの労働条件に関する直接の規定には判断なし

2.なぜ「合意」していない就業規則が「合理的」なら労働契約の内容? という基本問題に答えていない(電電、日立)



○著者私見−制度説

◇[結論1]労働契約となりうる就業規則規定は限定されている。

就業規則の機能…労働者の集団を対象とした「制度」の設定

就業規則が労働契約になる=
 × 就業規則の条項が使用者と労働者の合意となる
 ○ 労働者も制度の適用を受ける一員になる という趣旨で労働契約の内容

∴労働者の集団を対象とした制度の意味ない内容…就業規則に記載しても労働契約の内容といえない

 ex.「正規従業員の地位を契約社員に変更することがある」
  …個々の労働契約を対象とした再契約の予約。就業規則で一律に制度化不可

◇[結論2]合理性…就業規則が労働契約内容となっているといえるための制約原理

下記は「合理的」といえない

・制度として機能していない
(ex.20年前に作成、誰も見たことがない→いきなりひきだして配転命令)

・一部の労働者に過酷・不当に労働者の利益を害する


就業規則の変更等に関する学説等について+著者の立ち位置

判例確立前…法規範説と契約説/定型契約説

判例確立後
(1)契約説における労働者の同意を擬制する説
(2)一定要件下での使用者の労働条件変更権限を端的に肯定する説
(3)契約説における労働者の個別的同意を集団的同意に置きかえる説 ←著者はここ!
(4)一定要件下で使用者による集団的変更解約告知を容認する説
(5)雇用システムへの適合性という視点か判例法を支持する説


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 00:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月16日

労働契約の成立−例外(就業規則)(1)

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

(労働契約の成立)

第六条[合意原則]  労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

第七条  労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の内容と異なる労働条件を合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。



■労働契約の締結時に「就業規則=労働条件」になる要件は、2つ:

1.合理的な労働条件

2.周知させていた
    ↑政府案「周知させた」→「させていた」に修正

 →適用タイミングがはっきりする(→図)

本条が適用されるのは、労働契約を締結する時点
=すでに労働契約が締結+就労し始めてから周知された就業規則は対象外!

■8条 vs 9条+10条 と比較して
条文を「文字通り」にたどっているときに、ふっと思った感想ですが:
(できましたら、ご教示・ご指摘をお待ちしています)

文字通りに読むと(=文理解釈?)、
6条と7条が互いに言及せず、たんに並列されているのには、違和感があります。


6条 労働契約は合意で成立する。
(⇔合意によらずして労働契約は成立しない:反対解釈(=対偶))

7条 就業規則+周知させていた →労働契約の内容は就業規則の労働条件による


すなわち

6条 AはBで成立する(⇔B以外でAは成立しない)
7条 AはCで成立する


→ 6条が真なら、7条は偽 …?!


…7条には「労働契約が成立する」とは書いてない ゆえに矛盾しない…のかな?(しかし「労働契約『の内容は』」…って、「成立する」とどう違うの?)

6条 労働契約は合意で成立する

7条 労働契約締結時に就業規則(内容が合理的)を労働者が閲覧できたのなら、[中身を読んで合意した・制度に組み込まれた etc.…むにゃむにゃ とみなして]労働契約の内容は就業規則によるものとする

ということ?

とすると、「むにゃむにゃ」のところに、就業規則の効力をめぐる諸説を、対立を顕在化させないように埋め込んだ、のかな(=どんぶり勘定)…??

…to be continued!


8条 vs 9条+10条 でも、読み方には少し触れてみたいと思います。


■次回は判例法理をご説明します。

→就業規則の変更等に関する判例・裁判例:h16.6.10研究会資料(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/06/s0610-5b.html


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 05:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月15日

労働契約の継続及び終了(3)−解雇

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

(解雇)
第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。


(旧)労働基準法18条の2です。


●民法上、解雇は辞職と同等

(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。
(2項、3項略)


解雇(=使用者からの解約)の予告期間も、辞職の場合と同様に2週間。

●EU諸国の一部では、解雇を法律で直接制限
 ドイツ…解約告知保護法(解雇制限法)


日本では、解雇事由を法律で制限する一般的規制(=「解雇には正当な理由が必要」を一般的に宣言する立法)なし

 個別法にはあり
  例:労組法…労働組合員・正当な組合活動 を理由とする解雇を不当労働行為として禁止
    均等法…男女差別に基づく解雇を禁止

なぜ?:終身雇用→解雇に特別な立法的手当ての必要性が認識されず

↓but

●解雇に対する考え方の変化 …終身雇用が崩れる
・企業変動のシステムが立法により整備(会社分割・合併・営業譲渡(事業譲渡))
・雇用形態の多様化(パートタイマー・派遣労働の増大)
・スキルアップのための転職
・企業が即戦力を求める(OJTで育てない) …

→雇用の多様化・流動化

→解雇について明確な法的基準が必要 という認識が一般化

→h15 解雇ルールの法制化(労働基準法18条の2)


解雇権濫用法理 →図

…原則不可・例外可/挙証責任も使用者

理由(by野川):
 戦後の雇用社会の変遷(とくに日本の高度成長期)のなかで、
 企業(使用者)と労働者の間に
 取引があったのでは。

 ・経営状況が苦しくなってもできるだけ解雇しない
   そのかわり
 ・強大な人事権


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 06:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月14日

労働契約の継続及び終了(2)−懲戒

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

(懲戒)
第十五条  使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

●客観的に合理的 →ダイハツ工業事件(東京高判昭和61.5.29)
http://www.jil.go.jp/kikaku-qa/jinji/J07.html


●雇用社会に実態として普及している懲戒制度:
 法的には異質。
  対等な契約当事者間において、一方の当事者だけが他方に懲戒権を行使できることはありえない。

  ・民法上…822条(親→子) ほか:弁護士・医師に関する法律・刑事施設の長
  ・政治団体・民間団体…規約にあり。が、構成メンバーによる民主的決定。他のメンバーの意向を無視して懲戒制度を設け、行使するわけではない


→Q:使用者が懲戒権を行使できるという法的根拠はどこに??


・国鉄札幌運転区事件 最3判s54.10.30:企業の存立の維持と事業の円滑な運営ために、施設などのみならず人的要素についても合理的・合目的的な秩序を作り出し、維持する権限を持つことを認めた。

…労働者は人格を持つ「独立した法的主体」。施設や資産とは異なる。→労働契約を結ぶことで初めて、労働契約の範囲内で所定の義務(企業秩序に従うことを含めた)を負う。

・富士重工事件
  企業秩序を定立・維持する権限と、それを遵守する労働者の義務とは直ちに対向する「権利−義務」の関係にあるのではなく、相互に異なる根拠に基づく。

労働者の企業秩序遵守義務…労働契約の付随義務の一環
→労働者が負う企業秩序遵守義務は、労務提供義務に関連する事業場・業務上の義務に限られる。無条件に使用者の権力に服するわけではない。

…最高裁の「企業秩序論」


●近年:
コンプライアンス・CSR → 就業規則に設けられる懲戒自由も、企業固有の「秩序」を乱したという点に加え、公的な規範・ルールに対する違反行為がより重視される傾向
 …懲戒制度の態様・法的意義も変化する可能性

→15条
・内輪の論理でなく客観的な観点から是認しうる理由
・他の労働者への対処やその企業の過去の慣行からアンフェアでない
ことが要請される。

●・懲戒手続きの適正な執行も重要(適正手続違反で無効:中央林間病院事件 東京地判h8.7.26)
・懲戒事由と懲戒処分は一義的に対応要。別の非違行為を懲戒処分の対象に織り込むことは許されない(山口観光事件 最1判h8.9.26)
・長期間の経過後→合理的理由のない限り権利濫用(ネスレ日本事件 最2判h18.10.6)


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 07:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月13日

労働契約の継続及び終了(1)−人事異動(配置転換・出向・転籍など)

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考


(出向)
第十四条
 使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。



経緯 →表

研究会・労働政策審議会では「人事異動(配置転換(配転)・出向・転籍など)」のルールを作る前提だったが、政府提出法案では出向だけ残った(∵公労使の一致した見解を得ることが困難)

↓さらに

出向の定義(2項)が削除(国会)


出向命令権の所在・権利濫用になる場合 →表


●経緯(出向の定義の削除)

政府案 第2項…「出向契約」を定義
:「労働契約に基づく関係を継続する」という表現によって
 ・転籍or移籍出向 が 労働契約法の「出向」にあたらないことを明示
 ・出向元と出向先の間で出向労働者に関する権利義務を整理することを求める

→実務上は多様な類型の出向があり、削除

研究会・労働政策審議会とも明快な解決を得られず。今後も議論の展開が予想される。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 00:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月12日

労働契約の継続及び終了 〜「濫用」シリーズ

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

第三章 労働契約の継続及び終了

(出向)
第十四条  使用者が労働者に出向を命ずることができる場合において、当該出向の命令が、その必要性、対象労働者の選定に係る事情その他の事情に照らして、その権利を濫用したものと認められる場合には、当該命令は、無効とする。

(懲戒)
第十五条  使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

(解雇)
第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

いずれも「濫用→無効」です。

が、違いはあります。
さて、どこでしょう?


……(10分経過)……


[答え]

14条 その権利を濫用したものと認められる場合には
15条 〜と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、
16条 〜と認められない場合は、その権利を濫用したものとして、


すなわち、

14条   …原則シロ/例外クロ(濫用時)
15条・16条…原則クロ(=濫用)/例外シロ(客観的に合理的な理由+社会通念上相当 の場合)

出向 と 懲戒・解雇 では、図と地の関係が逆転しています。→こちら


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 07:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月11日

有期労働契約−反復更新の規制

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

第四章 期間の定めのある労働契約

第十七条  使用者は、期間の定めのある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。

2  使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。


■第1項:使用者からの解約を制限(民法628条…労使双方について期間途中での解約を制限)

○国会修正
・政府案「やむを得ない事由がないときは」…労働者側が立証要 のような表現
 →法「やむをえない理由がある場合でなければ」…使用者側が立証要


■2項 …反復更新の規制

労働者側は「雇用継続に対する合理的期待がある場合には更新を拒否できない」にするよう求めたが、最終的には現在の形となった。


○判例法理:下記の根拠で、解雇の法理を類推適用

a.期間の定めのない契約と実質的に異ならない

東芝柳町工場事件(最1判 s49.7.22) →cf.「合理的な意思解釈」(前回 2008.2.10)
…実質において、当事者双方とも、期間は一応2か月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、したがって、本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していた…[=期間の定めの条項にかかわらず、当事者の合理的な意思解釈としては実質的に期間の定めのない契約を締結していた:東京高裁判決h19.11.28より]
→本件各傭止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨=実質において解雇の意思表示
→本件雇止めの効力の判断に当たっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべき


b.雇用継続の期待権(雇用継続の期待に合理性)

日立メディコ事件 最1判s61.12.4
[期間の定めのない労働契約と実質的に異ならない関係が生じたといえない場合でも]傭止めに当っては解雇の法理が適用さるべきである
[この事例では、この基準をたてたうえで「本工を解雇する場合とは合理的な差異あり→人員削減の必要性+配置転換困難の場合にまず臨時員の傭止めを行ったことが不当・不合理とはいえない」と判決]


現在はb.の適用が主流のようです。

・最初の更新が拒否された場合でも(=更新回数の実績が少なくても)解雇の法理の類推適用ありうる(竜神タクシー事件 大阪高裁h3.1.16)


○厚生労働省「基準」との関係

有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(h15.10.22厚労告357)

(1)契約締結時の明示事項等

(2)雇止めの予告(1年を超えて引き続き労働者を使用+更新しない→少なくとも30日前に予告要)
3回以上更新で予告義務 に改正
h20.1.23「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準の一部を改正する告示(h20厚労告12」公布(施行期日はh20.3.1)(意見:こちら) →2008.1.6 有期雇用契約、3回以上更新で打ち切り予告義務

(3)雇止めの理由の明示(証明書を請求→遅滞なく交付要)

(4)契約期間についての配慮(1年を超えて引き続き労働者を使用時)


○・期間を定めた雇用という形態は本来「期間を定めなければならない理由」がある場合にのみ採用されるものという原則に立ち、「必要以上に短い期間」を設定して「反復更新」することで労働者を不安定な地位に置き、自らはいつでも雇用を切れるようフリーハンドを維持する、という使用者の対応がアンフェアであることを意味…訓示規定としては意義
・具体的に使用者がこの配慮を欠いた場合にどうなるのかは不明(現在同様、判例法理で対応するのでは)


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 01:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月10日

労働契約の成立及び変更(原則)−合意

※ 野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

第二章 労働契約の成立及び変更

■章全体の構成:

1)成立−原則(6条)& 例外(就業規則:7条)

2)変更−原則(8条)& 例外(就業規則:9条、10条)

3)労働基準法との関係(11条〜13条)

本エントリ後は、いったん就業規則を後に回し、後続2章(継続及び終了・有期労働契約)を先に取り上げます(条文順だと天王山でへたってしまい、後続までいきつかないだろうと)。「有期労働契約→継続及び終了」と後ろから説明する予定です。

(労働契約の成立)
第六条  労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。

(労働契約の内容の変更)
第八条  労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。


■契約 →権利義務(図)

cf.
(定義)
第二条  この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
2  この法律において「使用者」とは、その使用する労働者に対して賃金を支払う者をいう。



■バックグラウンド:合意原則 →1条、3条1項


■「合意」って、何?

○合理的な意思解釈

・現在の日本では、当事者間で契約意識が薄い
→意思…裁判所は、「合理的な意思解釈」という手法を使って推測してきた。


 ※「合理的な意思解釈」とは?
わからんなりに乱暴に要約すれば、

a.証拠(文書など)
b.「合理的意思と法知識を持つ人?ならこうした[考えた]だろう」という予測・推論(「推定」という語は避けておく)

があった場合に、後者(b)を優先すること

でしょうか。(要確認!)

本来は明確な合意が存在すれば、最もクリアに契約内容が確定する
→労働契約法が3条で合意原則を明示し、それを本条であらためて労働契約の成立の要件としても確認したことは、大きな意味がある。



○「合意の瑕疵」論

民法には契約上の合意をコントロールするツール(公序良俗や錯誤や詐欺・脅迫)が用意されているが、
・そのツールが発動される場面でなくても、当事者の合意があまりにも不均衡な状態でなされているなら是正されるべき
・加えて、合意内容が不確定な場合の意思解釈についても、当事者間の不均衡性や情報の格差などを加味しながら対応しなければならない

という考え方。

→「労働契約における合意とは何か」という問題と非常に親和的

日本では特に、労働契約の締結時には労働条件について明確な合意がなされないのが通常→当該労働契約の合意内容をどのように確定するか? →そのような場合に有益!


■Q:民法623条との関係は?

(雇用)
第623条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。

労働契約法にのみ存在する規定あり…要検討

・書面確認の原則(4条2項)
・就業規則との関係(7条)
・懲戒(15条)



cf.労働契約(現行法との関係の整理)に関する学説について:厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/s0208-2e.html


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 10:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年02月03日

労働契約法:契約内容の理解・安全配慮義務

※野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考

・「ものとする」という文末…
労働基準法の「〜しなければならない」との違いに注意(強行的・直律的効力ではない)

・安全配慮義務 は、民法の信義則(1条2項)から出ているのですね。

(労働契約の内容の理解の促進)
第四条  使用者は、労働者に提示する労働条件及び労働契約の内容について、労働者の理解を深めるようにするものとする
2  労働者及び使用者は、労働契約の内容(期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。)について、できる限り書面により確認するものとする。

(労働者の安全への配慮)
第五条  使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
   
●4条(労働契約の内容の理解の促進)−−−

◇1項…
・締結時(労基15条)
・変更時
の両方
を規定!

制定理由…労働基準法15条違反の効果が不明のため
  日本では、契約意識が醸成されていない→当事者は、いつ、どのような内容の労働契約が締結されたのかを明確に意識していない

効果
 ・具体的にどうすれば義務を果たしたことになるのかの記述が困難→上記条文の記述
   →本条違反を根拠に、労働契約無効の主張や損害賠償の請求は不可
   間接的な法的効果はありうる(使用者の行為の違法性を審査する際に考慮)

 ・労働契約法10条(就業規則改定による労働条件変更)で合理性を判断する際の「事情」の1つになりうる


◇2項 …労働基準法15条1項+労基則5条 をふまえる
「書面による労働条件の明示」…労働側が強く求めたが、「書面なしを理由に契約無効」は取引の安定性を欠くとして現在の条文となった。
   使用者の行為の違法性を審査する際に考慮するポイントにはなりうる

・「期間の定めのある労働契約に関する事項を含む。」…国会で追加(労働契約法16,17条(有期雇用についての規定)を強める)
cf.有期労働契約の締結及び更新・雇止めに関する指針(h12.12.28基発779)
(1)更新・雇止めに関する説明



●5条(労働者の安全への配慮)−−−

◇国会で修正(労働契約により→労働契約に伴い
  「より」:労働契約に定めていないと安全配慮義務が生じない という誤解が生じる
  →「伴い」:使用者の安全配慮義務は労働契約の締結自体に伴って生じる

◇安全配慮義務…挙証責任転換のためのツール

・労災補償 の限界をカバー

・不法行為(民法709条)…過失を被害者が立証する必要 →債務不履行(民法415条)なら契約違反をしたとされる側が証明要

→使用者に「契約上の義務」がある必要 …Q:どんな義務?

→A:安全配慮義務(<信義則(民法1条2項)
 ・陸上自衛隊八戸車両整備工場事件 最3判s50.2.25、 川義事件  最3判s59.4.10


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 11:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月29日

労働契約の原則−民法総則二人羽織+α

 
労働契約法 第3条−労働契約の原則(野川 忍『わかりやすい労働契約法』2007 を参考)

判例法理は、民法総則を使って形成されてきました。
・信義則−安全配慮義務・忠実義務
・濫用−懲戒・解雇・その他人事権の行使
・公序良俗(民法90条)−男女差別     など

その判断原理を法文上で明確化したものです。

「合意原則」もまた民法による「契約」の一般原理を適用したもの、といえなくもありません。

これに、最近の動向が追加されたといえます。

・2項の均衡待遇の規定は「就業の実態に応じて」
・ワークライフバランスを規定する第3条も「配慮して」
であり、具体的に法違反の範囲を決めかねるところですが、
原則として規定されたことで、一定の方向性を示したことになります。

タイトルをもう少し展開すれば

立法目的(合意原則)+ 民法総則二人羽織 + 時代の風(均衡待遇・ワークライフバランス)

になるのでしょう。


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 08:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月27日

労働契約法:成立経緯−つわものどもが夢の跡

労働契約法 成立経緯:野川 忍『わかりやすい労働契約法』より


[研究会(学者)][労][使]をマンガにすれば、プレゼン資料になるかな。
(無断使用はやめてね(笑):さらに元をたどれば本の内容ですが)

というわけで:

学者たちの壮大な実験計画は、「就業規則」を除き、
労使双方の実務家によって、ことごとく葬り去られ、
あとには
誰から見ても異議のつけようのない判例法理の、さらに一角だけが残った。(それも国会で一部修正)

というのが、成立経緯のようです。


「就業規則」は残っており、今後、焦点となってくるでしょう。


労使委員会の機能拡大・雇用継続型契約変更制度・解雇の金銭解決 については
「成立しなくてよかった(ホッ)」というのが、個人的感想です。


労働契約法案に対する修正案(国会 h19.11)は、こちら


↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング

労働契約法案に対する修正案
posted by 若葉 at 09:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月24日

わかりやすい労働契約法

ほんとは年金2級を扱いたいのですが、計算練習になるので、読み物としてはちょっと不向きかと:



わかりやすい労働契約法

わかりやすい労働契約法

野川 忍

2007/12 商事法務 ISBN-13: 978-4785714970



2008.1.19エントリで紹介した『図解 まるわかり労働契約法』が「現在の断面」とすると、こちらは成立経緯も含めた「根拠の把握」ができます。

「労働契約法」というより「労働法」「労働契約」全般を扱っていますね。

日付はおそらく飛び石状になりますが、こちらの本に沿って、随時、取り上げていきたいと思います。


次回に「成立経緯」を扱いたいところですが、まずは、今年の選択式予想問題:
(Fまであるのはご愛嬌)

労働契約法
第一章 総則

(目的)第一条  この法律は、労働者及び使用者の(A)の下で、労働契約が(B)により成立し、又は変更されるという(B)の原則その他(C)を定めることにより、(D)な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、(E)を図りつつ、(F)に資することを目的とする。

[解答]
A 自主的な交渉
B 合意
C 労働契約に関する基本的事項
D 合理的
E 労働者の保護
F 個別の労使関係の安定


なお、第1条には出てこないが重要なキャストがいます。「就業規則」です。

↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 12:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年01月19日

労働契約法と就業規則



「労働者」概念の違いなど、既存の労働法との対応をまとめてくれているのがポイントです。判例も流れ(+最もメジャーなもの)を追う形となっており、最初に読むにはよいのでは。



「雛形就業規則は使わないように」という言葉をよく見かけますが、
労働契約法を「雛形」にすると、たぶんうまくまとまるのかな、と思いました。

ただし、現時点の労働契約法には
「議論されたが盛り込まれなかった」論点が多くあり、
いわば「最低限の必要条件」しか盛り込まれていない状態となっています。

記載されなかった潜在的なポイントをもきちんとカバーする必要がありそうです。

↓クリックしていただくと励みになります!
にほんブログ村 士業ブログへ
 にほんブログ村 士業ブログ
 blogランキング
posted by 若葉 at 10:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 労働契約法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。